リードの調整とベンド

Posted 1件のコメントカテゴリー: HOW TO BEND(ベンド

ベンドをしやすくするに当たって、リードの調整は非常に大切です。ハーモニカのリードというのは全体に少し反っていて、先端がプレートから少し浮いた状態になっています。これをアゲミといい、先端のプレートからの距離(高さ)を調整する事で、リードの挙動が変わってきます。アゲミを高くすること自体を「上げみ」、アゲミを低くすることを「下げみ」という言い方もあります。

このアゲミ調節は演奏テクニックではなく楽器の調整、メンテナンスの仕方になりますが、これによりベンドのかかり易さや鳴り方が大きく変わってきます。もちろんベンドをしない通常音の鳴りにも関わってきますので、ぜひ覚えておいていただきたい非常に大事な要素です。

 

私はリード調節をするときに SUZUKIのスズキハーモニカ修理工具セット [ H R T – 0 1 ]を用いています。これに付属するマニュアル(SUZUKIのホームページからもダウンロード可)がアゲミについてとリード調整の実際についてとても分かりやすく書かれており、参考になると思います。

https://www.suzuki-music.co.jp/app/uploads/HRT01_manual.pdf

SUZUKIの宣伝ばっかりしているようですが、普段使っているハープはHohnerのです(笑)

このマニュアルの一部を抜粋すると

『 リードには「アゲミ」という空気が流れるための反らしがついています。低音はゆっくりと多くの空気が流れる必要があり、アゲミを高くします。高音は空気を早く鋭く流す必要があり、アゲミを低くします。アゲミが低いと音の立ち上がりで吹き詰まりしやすく、高いと息漏れしたような感じとなります』 とあります。

この一文を個人的な意見を加えもう少し詳しく説明したいと思います。

元々のリードの特性として、

低音側(1番に近い側)のリードは高音側のリードに比べて長くて重くできていてゆっくり振動する(=固有振動数が小さい)ため、遅い息(=弱い息)でも反応して音が鳴り易い。逆に速い息を流すと、(特に息の出始めで)音が詰まって出なくなりやすい。

高音側(10番に近い側)のリードは速く振動するため、遅い息に対しては反応しづらい(即ち小さい音で鳴らしにくい)が、速い息にも反応するのでして音が詰まったりしない。

という特徴があります。

アゲミを変化させることによっても音の鳴り易さは変わります。

アゲミを低くすると、遅い息に対してリードのレスポンスが良くなり、速い息に対して音詰まりがしやすくなります。これは、低音側のリードの元々の特徴と同じです。

アゲミを高くすると速い息で音つまりがしないため大きな音が出しやすいが、空気のロスが大きくなる(効率よく息がリードに伝わらない)ため、遅い息では音はなりづらい。これも高音側のリードの元々の特徴と類似しています。

従って、低音側リードでアゲミを高くする、高音側リードで低くするというSUZUKIの推奨は、低音リードと高音リードの長所短所とも消し、リード間で特徴差をなくす設定と言えます。確かにこの方が扱いやすいのかもしれませんが、ただこれは各々のプレイヤーの好みや演奏スタイルやジャンルにもよって、自分の良いように設定をすればいいと思います。個人的には私はあまり強い息は使わず、その分テンポの速いフレーズを演奏することが多いため、音詰まりのしにくさつまりボリュームや音圧より、とにかくレスポンスを優先し、低音・高音を問わずほぼ全てのドロー・ブローリードのアゲミをかなり低くしています。そして、アゲミを低くすると、結論としてベンドはかけ易くなります。後述しますがオーバーブロー・ドローもです。

ということで本題まで長くなりましたが、ベンドをしやすいアゲミ調節は? ということですが、 ドローもブローも、基本的には低めのアゲミがやりやすいです。少ない量の息、すなわち弱い息でリードが反応するので楽にベンドができますし、欠点としての音詰まりは、ベンド音においては個人的には経験した記憶はありませんので起こりにくいと思います。そしてベンドをかけるリードと逆側のリード(ドローベンドならブローリード、ブローベンドならドローリードのこと)のアゲミも低くした方がやりやすいはずです。この理由は前述したように、通常のベンドは反対側のリードも共鳴して振動しているからです。 短いですが本題は以上です(笑)。

ベンド幅の限界

Posted コメントするカテゴリー: HOW TO BEND(ベンド

実は通常のベンド(1-6番ドローベンド、7-10番ブローベンド)においては、ベンドをかけるリードと逆側のリードも同じ振動数で共鳴して同音を発しています。

そのため、1枚のリードだけの振動に比べて音がしっかりし、音量もあり音高(ピッチ)も安定しやすくなっています。ただ2枚のリードが鳴っているため、ベンドをかける側と逆側のリードの通常音の高さによって音の下がる限界=ベンドの下限ができてしまいます。

例えば3番のドローベンドの場合、通常ドロー音はBですが、ブローリードの通常音がGなので、Gより高い音(12音階で言えばA♭、A、B♭。実際に各々の中間、例えばGとA♭の間の音も無段階で出る)しか出ません。これはベンドをするとドローリードがBから下がった音が出る一方で、ブローリードは逆にGから音が上がってドローリードと同じ高さの音が鳴っているのです。ここでは詳細説明は省きますが、ブローリードはドロ-(吸う事)によって元の音より下がることはなく、通常音より高い音しか出ません。したがってこれがベンドで下がるピッチの限界を規定することになるのです。したがって逆側のリードを塞いだりして鳴らないようにすると、この下限はなくなり、場合によってはより低い音までベンド音がだせるようになります。ただ片方のリードだけで音を作ることになるので、負荷(圧力)がかかった状態のリードは大きくは振動せず(振幅が小さくなる)、ベンドを深くかけて音高が低くなるほど音量も小さくなり最終的に0になるので、それにより別の下限が規定されます。バルブのあるハーモニカはこれに当てはまります。例えばクロマチックハーモニカはバルブがあるため、ある穴でドローベンドをかけようとするとドローリードは反応するがブローリードは振動しないため、少しピッチが下がっただけでベンド音がすぐに減衰し、演奏に使える音としてはせいぜい半音下くらいまでだと思います。実はクロマチックハーモニカをやったことがありませんのであくまで推測ですが、バルブ付きの10ホールズハーモニカでベンドをしたとき、同じような感覚を覚えました。ちなみにバルブ付きの10ホールズハーモニカの紹介をしますと、私が知っているのはSUZUKIのMR-350(v)シリーズにあります。バルブを付けることで単リードでベンドが可能になるので、通常のベンドのみでは出ない音階、(例えばCハーモニカの1番ドローと2番ブローの間のE♭の音など)がオーバーブロー・ドローをしなくても全て出せるようになります。ですのでジャズなどの半音階の進行の多いジャンルの曲も演奏できるようになります。これはこれで面白い楽器なのですが、バルブのベンドの感覚は2枚のリードが鳴る通常のベンドと違い、より細く不安定な音が出がちできれいな音を出すのに熟練を要します。それとオーバーブロー・ドロー自体ができなくなる(理由は追々説明予定)ので、オーバーブロー・ドローに慣れている方には逆になじみにくいハープと言えます。あと、バルブ付きのハープはより細かいメンテナンスが必要になるという側面もあります。

ベンドの音高(ピッチ)調節

Posted コメントするカテゴリー: HOW TO BEND(ベンド

ベンドのかけ具合、すなわち音高(ピッチ)の下がる程度は、

息の通り道を狭めた部分より前方の口腔内の空間の容積の大小で変えることができます。

容積が大きいと音は低くなり、容積が小さいと音は高くなります。

(おそらく口笛やリコーダー等の楽器と似たような理屈です)

実際には、舌を口蓋に近づける位置(の最前部)を前にすることで容積は小さくなり、舌と口蓋の近接部を後ろにする(舌を喉の奥に引く感じ)と容積は大きくなります。これにより、無段階(「※ベンドの限界」の範囲内で)で音高の調節が可能です。 どれくらい容積を変える事でどれくらい音が下がるかの程度は、色んな要素によって変わってきます。根本的にはリードが異なると具合も変わるので、ハーモニカのキー、機種、同じハーモニカでも穴によっても変わります。

同じハーモニカの穴番違いで言えば、低い音の穴のベンドほど、息の通り道を狭める位置をより後ろにする必要があります。私の勝手な呼び方ですが、位置が後ろ寄りのベンドを深いベンド、前寄りのベンドを浅いベンドと今後呼ぶことにします。たとえば10番の半音ブローベンドは非常に浅いベンドであり、1番のドローベンドは非常に深いベンドが要求されます。

ベンドの実際

Posted コメントするカテゴリー: HOW TO BEND(ベンド

前記事で、ベンドをかけるためには体の中(胸腔~口腔)と外気で、圧力差をつけると言いました。

どのように圧力差をつけるか。口腔内での息の通り道部分的に狭めるのです。

そのためにはどうするか。舌を変形させる。これだけです。

どのような形に変形させるか。

舌(先端ではなく中央~根元付近のイメージ)を口蓋(上あご)に付けるようにして、息の通り道を細くします。 そしてこの舌の形を維持したまま息をくぐらせる。

因みにブローベンドもドローベンドも方法は全く同じです。

例えると、英語の発音で、子音の[k]・[g]等を発音するときの舌の動きが参考になると思います。

とても分かり易い図を描いてらっしゃるサイトを見つけました。

http://www.oleviolin.com/MundHarpe/eng/Blues_Harp_Bending_The_Notes.htm

口腔内はなかなか見る事ができないので、ベンド時の口の中の動きを示した図を載せているサイトはたくさんありますが、間違ったものが非常に多いです…。

でもこのサイトの図が果たして正しいのかは保証できません(苦笑)。でも私の思っているイメージ(これも正しいかは分からないが)には一番近いです。

他の物事に例えると、ブローベンドの要領は、ホースで水を撒く時にホースのゴムを一部分でつまんで狭めると、水の勢いが強くなるのと同じと考えるとわかりやすいでしょうか。即ち、ホースが喉~口腔、つまんで狭まった部分が舌と口蓋の近接部、水が息に置き換えられると思います。そして圧力の強い息がリードに伝わる事でリードが湾曲し、通常より低い音が出る、という理屈です。

慣れていないと、ベンド音が長く続きませんが、これは吸ったり吹いたりしたときの空気の流れにつられて舌の位置がずれてしまっていることが原因であることが多いです。

音がきれいに鳴る舌の位置を体で覚えましょう。慣れないうちは無理な力がかかりますが、慣れると全く力を入れずに鳴らせるようになるはずです。

圧力差をつけるもっと単純な方法は…息を強く(速く※)吹き吸いすることです。これでも少しベンドがかかりピッチが下がりますが、必然的に音量も大きくなるので、同じ音量でベンドの調節ができません。このことは、むしろベンドのかけ方でというより、通常音でピッチが自然に下がり易い方の注意点として覚えておくべきポイントだと思います。とくに低音部のリードでは、この傾向が顕著になります。

※今後当サイトでは強い息と速い息、は区別せず同義として扱います。

ベンドの原理

Posted コメントするカテゴリー: HOW TO BEND(ベンド

*ハーモニカの音が鳴る原理

根本的な話ですが、ベンドを学ぶ前にまずはハーモニカのリードの音が鳴る原理も知っておいた方が良いでしょう。ここでは説明は省きますので他のサイトをご参照ください。個人的にはYAMAHAのサイトの説明が分かり易くてお勧めです。→

https://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/harmonica/mechanism/mechanism003.html

こちらのページにも記載がありますが、音量の大小を決めるのがリードの振幅の大きさです。一方、ベンドによって変化する音の高さ(音高、ピッチ)を決めるのは、リードの振動数です。リードはその長さや幅・厚み、重さなどにより決まった振動数(固有振動数)を持っているはずなのですが、例外としてベンドによって、後述しますようにリードの湾曲(変形)が生じ、振動数の変化をもたらすと考えられます(あくまで自論)。

 

*ベンドの原理

ある曲を演奏をするとき、必ずしも必要ではないが音楽理論の知識があると、役に立つ。それと同じように、ベンドもどういう原理で起こっているかということを最低限理解する方が、実際に演奏でベンドをするのに役立つはずです。ただベンドの原理は非常に複雑で難解で、厳密に説明しようとすると物理学の専門的領域に関わると思われます。個人的に調べましたが、少なくとも日本のサイトでは明確な答えにはたどり着けませんでした。ので、詳しい説明は省きます。簡単に言えば、 体の中(胸腔~口腔)と外気で、圧力差をつけることによりリードが湾曲した状態で振動します。音高※が変化します。この原理はドローベンド(吸い音ベンド)、ブローベンド(吹き音ベンド)に関わらず同じで、ドローベンドなら体内の気圧が通常音(ベンドしない音)を鳴らす時より低くなり、ブローベンドなら体の中の気圧がより高くなり、結果的に音高が下がります。さらに言えば、オーバーブロー、オーバードロー(詳細は後述予定)も基本的な原理は同じです。

初心者から上級者まで必見! 10ホールズハーモニカ(ブルースハープ)のベンド奏法をマスターしよう

Posted 3件のコメントカテゴリー: HOW TO BEND(ベンド

唐突にわざとらしいタイトルをつけましたが、なんと今日から連載でベンド奏法のやり方についての記事を書いていきます!ややマニアックな話もありますが、どこにも載っていないような内容も満載ですので、きっとみなさんのベンドの上達に役立つと思います。ぜひご覧ください。

ちなみに先日も、ハーモニカ歴は長いけどベンドが出来なかった友人に、これからお話しする内容の一部を教えただけで5分ほどで出来るようになりました。

※まずはパッカリング奏法でのベンドを前提とした記事を書いていきますが、タングブロックでも、パッカーのベンドと基本は変わりないのできっと役立つ内容と思います。

タングブロックのベンドについても機会があれば稿を改めて書いていきたいと思います。

 

*ベンド奏法

10ホールズハーモニカ(ブルースハープ)においてベンド奏法は、ブルースハープの最初で最後の関門と言ってもいいくらいの、非常に基本的でかつ奥の深い、重要な演奏テクニックです。ベンド音の具体的な出し方については色んな本やサイトで紹介されています。ただ、特に個人のサイトにおいては、部分的にしか賛成できない記事や、明らかに間違っている或いは非効率的な方法が説明されている情報が多い印象です。

私自身はベンド奏法をどのように習得したかと言うと、ハーモニカを始めて20年位経つので昔のことではっきりした記憶はないのですが、1-2冊の教本を見て独学で試行錯誤しているうちに、結構長い年月をかけて、少しずつできるようになり、今に至ります。正確に言うと、今でも少しずつは上達している(=条件によっては100%満足のいくベンドの音が出せていない)ので、現在も進行形の習得中です(^^;) ただその分、長年の改良を重ねているので、単にベンドの音を出せるだけでなく、①持続して正確なピッチ(音高)・音量で、②無理な力なく楽に効率よく、③良い音色で出す方法を心得ているつもりです。細かい所は人それぞれ違いがあって色んなベンドの方法があるとは思いますが、私個人は、ベンドをするために通常音(ベンドしない音)と異なる使い方をする身体の部位は、(+顎)のみです。唇や喉、腹筋の形や動きを通常音の出し方と変える必要はないと思います。

そして経験の浅い方は、まずどんな形であれ音を下げる事が出来るようになるのを目標とし、続いて上記①~③の部分をゆっくり地道に習得すれば良いと思います。 どんなに無骨で力の入った鳴らし方でも、音程が一瞬でも少しでも下がりさえすれば、ベンドは半分以上できたも同然だと思います!

あと、初めての場合は○番の穴のベンドが一番やりやすいとか書いている方もおられますが、何番穴のベンドがしやすいかは個人個人によって異なると思います。ハーモニカのキーや機種、リードの調整具合によっても変わりますし。